株式会社フロム・ソフトウェア¶
1 行サマリー¶
KADOKAWA 100% 子会社の AAA ゲームスタジオ(売上 235 億円、456 名)。NPC 音声は人間声優が主体だが、次世代作品での多言語展開・プロトタイピング用途に next-gen TTS の訴求余地がある中優先先。
事業構造と TTS 需要¶
主力プロダクトと売上規模¶
フロム・ソフトウェアは1986年設立、東京都新宿区(新宿フロントタワー)および福岡スタジオを拠点とするゲームデベロッパー。KADOKAWA の連結子会社で資本金184.7億円。従業員456名(2025年5月末)。
主力タイトルは「エルデンリング」「ダークソウル」シリーズ、「アーマードコア」シリーズ、「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」。エルデンリングは2025年3月期時点で世界累計出荷3000万本超(Shadow of the Erdtree DLC 込み)。同期売上は 234.97 億円、純利益 66.18 億円。
TTS・音声需要の所在¶
| 用途 | 現状 | TTS 訴求ポイント |
|---|---|---|
| NPC セリフ収録 | 英語人間声優主体(Frognation 経由ロンドン収録) | PoC 段階でのドラフト音声/大量テキスト試聴に next-gen TTS が有効 |
| 日本語版音声 | エルデンリング・ダークソウル3 は日本語ボイスなし、SEKIRO のみ日本語対応 | 日本語版音声需要が将来高まった場合に zero-shot TTS で試験的対応 |
| ローカライズ QA | 多言語字幕は全言語対応済み | 音声と字幕の同期確認作業の自動化補助 |
| 開発内部用 | デバッグ・プロトタイプ時の仮ボイス | piper-plus で低コスト仮ボイス生成 |
フロム・ソフトウェアのゲームはナレーター・NPC 台詞が豊富(エルデンリングは3000行以上の音声テキスト)。次世代タイトルで日本語音声追加や動的 NPC 台詞が実装される場合、TTS の需要は顕在化する。
現在の TTS 状況¶
公開情報に基づく限り、フロム・ソフトウェアは TTS ツールを製品音声に採用していない。主要な状況は以下のとおり。
- 製品音声: 宮崎英高ディレクターの方針により「西洋ファンタジーの雰囲気を出すため英語ボイスを採用」。Frognation(ロンドン・東京)がローカライズ・録音を担当。英語圏のスタジオで俳優収録。
- ゲームエンジン: 自社独自エンジン「Dantelion」(PS3 時代の Demon's Souls から派生、大幅改修継続)。Unreal Engine は VR タイトル「Déraciné」のみ例外的使用。UE 習熟は 2018 年時点で進行中とアナウンス済みだが主流エンジンへの移行は未発表。
- 音声制作ツール: DAW は STEINBERG Nuendo、オーケストラは生演奏収録(ブダペスト・フィルムオーケストラ、東京シティ・フィルハーモニック等)。TTS 使用の言及なし。
- AI 研究: R&D 部門は CEDEC 2020 でゲーム AI(強化学習・ルールベース AI)の研究発表あり。生成 AI・TTS に関する公開登壇は確認できず。
置き換え障壁: 宮崎英高社長が「今まで通りの作り方をこれからも変えない」と明言(GAME Watch 2022 インタビュー)。声優へのこだわりが強く、AI 音声による製品音声の置き換えは短期的に困難。
購買仮説¶
なぜ買いそうか¶
- 開発効率化ニーズ: 456 名規模、複数タイトル並行開発中(宮崎氏 2024 年末インタビューで「複数プロジェクト進行中」発言)。プロトタイプや QA 段階の仮ボイス生成コスト削減は普遍的ニーズ。
- 日本語ボイス再投資余地: エルデンリング・ダークソウル3 への日本語ボイス追加を求めるファン要望は根強い。将来タイトルで日本語ボイス対応する場合、収録前の zero-shot TTS ドラフトが開発コストを下げる。
- 売上急拡大 → 投資余力: 2025 年 3 月期売上 235 億円・純利益 66 億円と過去最高水準。ツール投資の予算確保余地あり。
- KADOKAWA グループ AI 戦略: KADOKAWA は 2025 年 3 月期の R&D 費 4.1 億円(前年比 17.8% 増)を計上。グループ全体で AI 活用を推進しており、子会社への AI ツール導入促進が親会社レベルで議題となりうる。
想定決裁者¶
- サウンドディレクター: 仮ボイス・音声プロトタイプ需要を最も理解する部門。8 名のサウンドチームが直接の受益者。
- R&D 部門長 / エンジニアリング責任者: CEDEC でゲーム AI 研究を発表する層。技術検討の窓口になりうる。
- CTO / 開発担当役員: ツール採用の最終決裁。宮崎英高氏(代表取締役社長)が開発方針に強い権限を持つが、内部ツールの採用は部門長が主導する可能性が高い。
予算サイクル¶
KADOKAWA の会計年度は 4 月–3 月。上半期(4–9 月)に翌年度予算計画着手が多い。CEDEC(8–9 月)前後でのアプローチが予算訴求のタイミングとして有効。
アプローチ戦略¶
推奨入り口: next-gen TTS の PoC 提案¶
製品音声への採用は宮崎英高氏の方針上ハードルが高い。まず「開発内部ツール」として next-gen TTS を切り口に入るのが現実的。
ステップ 1 – CEDEC 登壇後ネットワーキング 毎年 8–9 月の CEDEC(パシフィコ横浜)にサウンド・R&D 担当が登壇する。展示ブースやセッション後の懇親会で開発効率化の文脈から接触。
ステップ 2 – 仮ボイス生成 PoC 提案 「プロトタイプ段階の NPC 台詞を低コスト・短時間で試聴用音声化」というユースケースで PoC 予算を提案。300 万円前後の試験契約を目指す。
ステップ 3 – KADOKAWA グループ経由 親会社 KADOKAWA は AI 活用推進を宣言。KADOKAWA の IT 部門・AI 部門からのグループ横断紹介ルートも有効。
提案文面キーフレーズ案
- 「声優収録の前段階でゼロショット TTS でドラフト音声を生成し、ディレクターのフィードバックサイクルを短縮します」
- 「多言語展開のプロトタイプ段階で AI 音声を活用し、収録予算の最適化に貢献します」
- 「R&D チームの AI 研究環境にオンデバイス推論 TTS を統合し、動的 NPC 音声のプロトタイプが可能です」
piper-plus / next-gen TTS の選択¶
| 製品 | 適用場面 | 優先度 |
|---|---|---|
| next-gen(zero-shot・多言語) | 製品音声ドラフト生成、将来の日本語ボイス検討 | 高 |
| piper-plus(OSS・軽量) | 内部デバッグ・インディー規模 PoC | 低(フロムの規模には next-gen が適切) |
フロムは AAA 予算規模であり、OSS よりも商用ライセンス + サポートを好む傾向が予想される。まず next-gen TTS での提案を推奨。
関連プロダクト・採用事例¶
音声・対話プロダクト¶
- エルデンリング(2022): 英語ボイス・ナレーター Tim Cartwright、Melina 役 Martha MacIntyre ほかイギリス/ウェールズ俳優
- ARMORED CORE VI(2023): 日本語ボイス対応(Steam コミュニティで「日本語ボイス対応ありがとう」感謝コメント多数)
- SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(2019): 日本語ボイス対応(主人公は日本語ボイス有)
技術スタック¶
- ゲームエンジン: 自社独自エンジン「Dantelion」(Sony PS3 時代から継続進化)
- DAW: STEINBERG Nuendo(サウンド制作)
- ゲーム AI 研究: Python + Gym(強化学習)、Lua(ルールベース AI)
- 外部ミキシングエンジニア起用、生オーケストラ収録を優先
登壇録¶
- CEDEC 2020「自社タイトルからAI実験場を作り,検証を成功させるまで」(R&D 部門・4Gamer レポート掲載)
- CEDEC+KYUSHU 2023 基調講演(小倉康敬氏)
- GCC 2018 フロムソフトウェア開発体制・取り組み講演
リスク・注意点¶
- 宮崎英高氏の強いクリエイティブ方針: 「今まで通りの作り方をこれからも変えない」発言。AI 音声による製品ボイスへの置き換えには経営レベルの抵抗が予想される。開発内部ツールとして提案するのが現実的。
- 自社独自エンジン「Dantelion」: Unity / Unreal Engine との統合提案が直接当てはまらない。エンジン非依存の SDK・REST API での提供が必要。
- 声優組合・権利問題: 国内外の声優組合(SAG-AFTRA 等)が AI 音声に強く反発。フロムはプロの声優と良好な関係を維持しており、AI 音声による本番収録代替は訴訟・PR リスクを伴う。TTS はあくまで内部ツール・ドラフト用途に限定することが前提。
- KADOKAWA 株主問題(2026 年): アクティビスト OASIS がフロムを「最重要子会社」と位置づけ分離・上場を求める株主提案を提出中(2026 年 6 月時点)。親会社の経営不安定化がグループ横断 IT 投資の意思決定に影響する可能性がある。
- 内製方針: R&D 部門が AI 研究を内製で進める文化あり。外部ツール導入の意思決定に時間がかかる可能性。
- 競合 TTS: VOICEVOX(OSS・日本語特化)、A.I.VOICE for GAMES(AHS)、ElevenLabs が既にゲーム開発向けに営業展開している。
連絡先候補¶
| ルート | 詳細 |
|---|---|
| 公式法人問い合わせフォーム | https://www2.fromsoftware.jp/p/main/inquiry/Corporation/ |
| 公式お問い合わせページ | https://www.fromsoftware.jp/jp/inquiry.html |
| CEDEC(8–9 月・パシフィコ横浜) | サウンド・R&D 担当が毎年登壇。展示ブース・ネットワーキングセッションで接触 |
| CEDEC+KYUSHU(11 月・福岡) | 福岡スタジオスタッフが登壇実績あり |
| TGS(東京ゲームショウ、9–10 月・幕張) | 出展予定あり、法人デーでのアポ取得可能 |
| KADOKAWA グループ AI 部門経由 | 親会社 KADOKAWA の IT・AI 戦略部門からのグループ内紹介を狙う |
| 採用ページ経由(中途採用応募者コネクション) | エンジニア・サウンドデザイナーの採用担当経由でR&D 部門に紹介 |