株式会社バンダイナムコエンターテインメント¶
1 行サマリー¶
バンダイナムコ HD (7832 東証プライム) 中核のゲーム・IP 会社(デジタルユニット年売上 約 4,766 億円)で、アイドルマスター・テイルズ・エルデンリングを擁し、内製 AI 音声 ELMIRAIVE VOX を持ちながら多言語・オンデバイス TTS に未着手の大型商談候補。
事業構造と TTS 需要¶
バンダイナムコエンターテインメント(BNE)は、バンダイナムコホールディングス(東証プライム 7832)傘下の中核ゲーム事業会社。CE(コンシューマーゲーム)・NE(ネットワーク)・AE(アミューズメント)・ライセンスの 4 部門を持つ。親会社 HD の 2026 年 3 月期連結売上高は 1 兆 3,482 億円、デジタルユニット単体で 4,765 億 9,200 万円(前年比 +4.6%)。研究開発費は 25 年 3 月期に過去最高の 365 億円(デジタル分 199 億円)を計上している。従業員数は BNE 単体 835 名(臨時除く)。資本金 100 億円。
主力 IP はアイドルマスター(学園アイドルマスター 2024 年リリース)、テイルズ オブ シリーズ、エルデンリング、ドラゴンボール、ワンピースなど多数。海外売上比率 50% 超を 2028 年目標に掲げており、グローバルタイトルの多言語ニーズが急拡大中。
TTS 需要の主要ポイント¶
- キャラクターボイスの動的生成: アイドルマスターシリーズはキャラクターボイスが事業コアであり、ユーザー生成コンテンツ・ライブ配信 AI キャラクター向けにリアルタイム音声合成需要が存在する。学園アイドルマスターでは TTS によるアナウンス音声(プレイヤー名読み上げ)を導入済み(CEDEC 関連報告)。
- AI ゲーム実況・配信 AI キャラクター: 「プレイ BY ライブ」(2022 年〜)では LLM + 音声合成でリアルタイム会話・実況を実現。現在の内製技術の限界(多言語非対応・zero-shot 非対応)を補う外部 TTS 需要が潜在。
- 多言語ローカライズ: 海外 50% 目標に向けて英語・中国語・韓国語・スペイン語など多言語ボイスコスト削減の圧力が高い。piper-plus の多言語対応(JA/EN/ZH/ES/FR/PT)は直接ニーズに合致。
- ゲーム内 NPC ランタイム TTS: NPC の動的音声生成(未実装)や、開発プロセス内のプロトタイピング・仮ナレーション用 TTS に需要が生じやすい。
- アクセシビリティ対応: CRI ADX Text Speaker を採用済みのスマートフォンタイトルが存在するが、現状は英語限定。日本語・多言語対応の要求が今後生まれうる。
現在の TTS 状況¶
内製: ELMIRAIVE™ VOX / Singer(バンダイナムコ研究所)¶
バンダイナムコ研究所(100% 子会社)が独自開発した AI 音声合成技術「ELMIRAIVE™ VOX」を保有。特徴は「キャラクターらしさを表現する独自設計ノウハウ」「ピッチ・フォルマント制御ではなく AI による完全変換」「音声認識による品質チェック自動化」。2026 年 3 月にはプロ野球カードゲームアプリ「プロ野球ファンスターズリーグ」の AI 実況でこの技術を外部展開しており、グループ内外への提供実績がある。
ただし以下の制約が確認されている: - 多言語対応が不明: 公開資料では日本語中心の活用事例のみ確認。英語・中国語など非日本語への zero-shot 対応が公表されていない。 - Unity/Godot/UE プラグインの非公開: SDK 化・ゲームエンジン向け組み込みモジュールの外部公開はなく、外部ゲーム開発会社が使うための仕組みが整っていない。 - オンデバイス推論: 公開情報の範囲ではオンデバイス対応の記述なし。
外部採用: CoeFont・CRI ADX Text Speaker¶
バンダイナムコアミューズメント(AM 部門)が 2024 年 12 月にクレーンゲーム機「クレナグラン」の操作音声に CoeFont(AI 音声プラットフォーム)を採用。また BNE のスマートフォンゲーム一部タイトルで CRI ADX の「CRI Text Speaker」(英語のみ)を採用し、テキストチャットの音声読み上げ(アクセシビリティ)に活用している。
置き換え障壁¶
- ELMIRAIVE VOX が内製であるため、「完全置き換え」よりも「補完・共存」の提案が有効。
- バンダイナムコ研究所との関係整理が必要(競合ではなく連携 or 非対応領域を狙う戦略)。
- 大企業の調達プロセスは長期(半年〜1 年)であり、PoC 経由での段階的拡大が現実的。
購買仮説¶
なぜ買いそうか¶
- 多言語 TTS の内製空白: ELMIRAIVE VOX は日本語特化と推定され、海外 50% 目標に向けた英語・中国語・スペイン語などへの対応が急務。piper-plus の 6 言語(JA/EN/ZH/ES/FR/PT)対応は即座に補完できる。
- グループ全体の音声 AI 投資加速: デジタル部門 R&D 費 199 億円(前期比 10% 増)。AI キャラクター・配信 AI への投資継続中。外部調達への障壁は低い。
- CoeFont 採用前例: AM 部門が外部 AI 音声を採用した実績があり、外部 TTS ベンダーへの心理的抵抗は低い。
- サウンド自動化ニーズ: CEDEC 2025 でテクニカルサウンドチームが「自動化技術」を登壇テーマとして選んでいる。声優収録コスト削減・自動化の文脈で TTS は有効。
- zero-shot / ゼロショット合成ニーズ: 学園アイドルマスター等の新タイトルで多数の新キャラクターボイスを量産するコスト圧縮に zero-shot TTS の潜在需要がある。
想定決裁者¶
- バンダイナムコスタジオ テクニカルサウンドチーム責任者(CEDEC 登壇者と直接接触可能)
- NE 事業部(スマートフォンゲーム部門)のプロダクト開発責任者
- バンダイナムコ研究所 AI エンジニアチーム(連携提案 or PoC 窓口)
予算サイクル¶
バンダイナムコ HD の会計年度は 4 月〜3 月期。次年度予算は前年 11〜12 月に概算策定。PoC 予算の場合は部門裁量(数百万〜数千万)で動くことが多く、上半期(4〜9 月)提案が最も通りやすい。研究開発費ベースで PoC 計上可能。
アプローチ戦略¶
フェーズ 1: CEDEC / TGS での非公式接触(〜2026 年 9 月)¶
CEDEC(8 月、パシフィコ横浜)でバンダイナムコスタジオのサウンドエンジニア・AI エンジニアと名刺交換・セッション後トーク。テクニカルサウンドチームは CEDEC 2025 で自動化技術について登壇しており、次回も登壇可能性が高い。TGS(9 月)では法人向けブースで接触。
フェーズ 2: piper-plus OSS デモ送付・技術評価(〜2026 年 11 月)¶
多言語 TTS デモ(日本語・英語・中国語)を Unity / Godot プラグイン(uPiper)と合わせて GitHub リンクで共有。ELMIRAIVE VOX では非対応の多言語・zero-shot ユースケースを具体的な数字(声優収録コスト比較、生成速度)で示す。OSS 評価段階でコスト 0 円。
フェーズ 3: 次世代 TTS PoC 提案(〜2027 年 Q1)¶
AI 配信キャラクター向け(多言語 zero-shot)または新タイトル開発内での仮ボイス生成 PoC を 300〜500 万円規模で提案。バンダイナムコ研究所との連携を前提とした「補完提案」(ELMIRAIVE VOX が担う日本語コアキャラクター音声 + piper-plus / 次世代 TTS が担う多言語・NPC・仮ナレーション)を軸にする。
提案文面キーフレーズ案¶
- 「ELMIRAIVE VOX が担うキャラクター音声を損なわず、英語・中国語・スペイン語を即日追加できる多言語 TTS」
- 「Unity uPiper プラグイン 1 行で組み込み、声優収録 0 円で 6 言語の NPC 音声を実装」
- 「海外 50% 目標に向けたローカライズ音声コスト 90% 削減 PoC を 3 ヶ月で完了」
- 「zero-shot でキャラクターボイスを新タイトルに拡張。学習データ不要で即量産」
関連プロダクト・採用事例¶
音声・対話プロダクト¶
| プロダクト | 詳細 |
|---|---|
| ELMIRAIVE™ VOX | バンダイナムコ研究所内製 AI 音声合成。キャラクター音声特化。日本語中心。 |
| ELMIRAIVE™ Singer | メロディー楽譜から歌唱音声を生成。アイドルマスター関連コンテンツへの潜在適用 |
| プレイ BY ライブ(Play BY Live) | 2022 年〜。LLM + 音声合成による AI ゲーム実況・配信キャラクター。麻雀ゲーム「ごらうんどゲーム」等で稼働 |
| CoeFont(外部採用) | バンダイナムコアミューズメントのクレナグランで 2024 年 12 月採用。ひろゆき AI 音声 |
| CRI ADX Text Speaker | スマートフォンゲームのアクセシビリティ用途で採用。英語テキスト読み上げ |
技術スタック¶
- サウンドミドルウェア: CRI ADX(CEDEC 2025 登壇実績から確認)
- AI: LLM(GPT 系 / 内製?)+ 独自音声合成モデル(ディープラーニングベース)
- ゲームエンジン: Unreal Engine 5(鉄拳 8)、Unity(スマートフォンゲーム各種)
- クラウド: 内製 AI 基盤(バンダイナムコ研究所)
技術登壇録(CEDEC)¶
- CEDEC 2024「AIによるコンテンツ生成の落とし穴? ~ゲーム開発向け LLM 運用の光と影~」(AI エンジニア 頼展韜・會田翔)
- CEDEC 2025「戦い続けるための自動化技術〜テクニカルサウンドチームの取り組み〜」(バンダイナムコスタジオ)
- CEDEC 2025「CRI ADX と駆け抜けた若手社員たちの物語 ——サウンド演出への挑戦——」
リスク・注意点¶
内製化優先方針¶
バンダイナムコ研究所(ELMIRAIVE)が内製音声 AI を保有しており、BNE が「外部 TTS よりも ELMIRAIVE をグループ内調達」する可能性がある。提案は ELMIRAIVE と競合しない「多言語・オンデバイス補完」に絞るべき。
音声権利・キャラクター IP の複雑さ¶
アイドルマスターや声優 IP は権利関係が非常に複雑。AI で「声優の声に似た音声」を生成する提案は権利侵害リスクとして即却下される可能性がある。TTS を「声優収録の置き換え」として提案するのは NG であり、「NPC・UI・プロトタイプ用途」として切り分ける必要がある。
長期営業プロセス¶
東証プライム上場の親会社傘下であり、調達には稟議・セキュリティ審査が入る。最初の PoC 予算執行まで 6〜12 ヶ月の期間を想定すべき。
AI コンテンツ品質リスクへの敏感さ¶
CEDEC 2024 で「AI生成コンテンツの 5 つの落とし穴」を登壇テーマとして選んでいる。AIへの品質・倫理リスクへの社内意識が高く、提案時はリスク管理の枠組みを明示する必要がある。
競合 TTS ベンダー¶
CoeFont(東工大発スタートアップ・グループ内採用実績あり)、CRI ADX Text Speaker(既存ミドルウェア拡張)との競合。piper-plus / 次世代 TTS の優位性(多言語・zero-shot・オンデバイス・OSS)で差別化すること。
※当方推定¶
revenue_jpy_latest はバンダイナムコ HD デジタルユニット FY2026 売上高(4,765 億 9,200 万円)を使用。BNE 単体の売上高は非公開(完全子会社のため有報なし)。
連絡先候補¶
| 窓口 | 詳細 |
|---|---|
| 公式問い合わせ | https://www.bandainamcoent.co.jp/contact/ (一般) |
| 採用・技術者接触 | https://www.bandainamcoent.co.jp/job/ |
| バンダイナムコ研究所 ELMIRAIVE 問い合わせ | elmiraive-info@bandainamco-mirai.com |
| CEDEC(8 月・パシフィコ横浜) | バンダイナムコスタジオ登壇者との直接接触。2025 年実績あり(サウンドチーム) |
| TGS(9 月・幕張メッセ) | 法人向けビジネス DAY(2 日間)での接触 |
| バンダイナムコ HD IR | https://www.bandainamco.co.jp/ir/ (技術パートナー提案の入口としては不向き) |
| 021 Fund(スタートアップ投資部門) | https://021fund.bn-ent.net/ — TTS スタートアップとの連携窓口として活用余地あり |