コンテンツにスキップ

rinna株式会社

1 行サマリー

元・Microsoft 日本 AI 部門のチームが 2020 年に独立し、OSS 日本語 LLM と企業向け AI キャラクター/音声合成ソリューションを両輪で展開するスタートアップ。

ビジネスモデル

rinna は 混合型(mixed) の収益モデルを持つ。OSS モデルを研究コミュニティへ無償公開してエコシステム認知を高めながら、その技術力を背景に法人向けのクローズドソリューションで収益を得る構造である。

主軸 1: 法人向けカスタム LLM・AIキャラクター(enterprise_license / api_paas) Tamashiru Custom は特定業種・業務に特化した LLM を一社ごとに構築し、提案・開発・運用まで一括対応する受託色の強いエンタープライズ契約。Virtual Human Talk は AIアバター・LLM・音声合成を組み合わせた対話 UI を API ベースで提供し、Koemotion(TTS API)との組み合わせで従量課金が発生する。

主軸 2: 音声合成 API「Koemotion」(api_paas) 7 感情・声色カスタマイズ・リップシンクデータ同時出力を特徴とする日本語 TTS API。月額固定費+従量課金(1 リクエスト 1 円〜)の Freemium 設計。Virtual Human Talk との内部バンドルで間接的収益にもなる。

OSS モデル(研究公開・間接収益) HuggingFace に 60 超のモデルを公開(累計 3.6 億ダウンロード)。直接収益はゼロだが、技術ブランド力と採用広報を兼ね、受託・API 商談の前段として機能する。

売上・利益・財務ハイライト

rinna 株式会社単体の売上・利益はいずれも 非公開。非上場企業であり、有価証券報告書・決算短信の提出義務がない。親会社 Bombax Corporation も財務データを公表していない。

従業員数は採用データベース(STARTUP DB)に「〜10人」(2026 年 6 月時点)と掲載されているが、業務委託・研究者を含む実態は不明。

資金調達は親会社 Bombax Corporation が 2021 年 7 月にシリーズ A ラウンドを実施し、評価額 10 億ドル超(ユニコーン到達) と発表。ただし調達金額・投資家名・rinna 株式会社への資金流入額はいずれも非公開であり、rinna 単体の funding_total_jpy は null とした。

沿革・撤退事業

年月 出来事
2015-07 日本 Microsoft AI&Research 部門が AI「りんな」を LINE 公式アカウントとして公開。1 ヶ月で 130 万ユーザー
2016-10 りんな、テレビドラマ出演(俳優デビュー)
2019-03 りんな、「高校卒業」を発表
2019-04 エイベックスと契約しメジャーデビュー
2020-06-17 rinna 株式会社を設立(法人番号 2010701039417)。ジャン"クリフ"チェン(陳 湛)が初代代表取締役社長
2020-08-21 Microsoft より AIりんな 事業を正式移管。Rinna Character Platform(法人向け)も開始
2021-07 親会社 Bombax Corporation がシリーズ A 調達。評価額 10 億ドル超
2022-01 電通と協業。AI キャラクター法人ソリューションをネッツトヨタへ試験導入
2022-04 個人向けアプリ「キャラる」正式リリース
2023-04 りんな、AITuber(バーチャル YouTuber)としてデビュー
2024-03-05 キャラる サービス終了。ビジネスモデルの持続性課題(無料設計で収益化が困難)が背景とされる
2024-04-01 宋 珠憲(ソン・ジュホン)が代表取締役社長に就任。創業者チェンは退任
2024-05 Virtual Human Talk(AIアバター×LLM×音声合成統合ソリューション)提供開始
2024-07 Llama 3 Youko 8B / 70B を OSS 公開。日本語継続事前学習モデルとして HuggingFace でリリース
2025-02 Qwen2.5 Bakeneko 32B を OSS 公開(MIT/Apache 2.0)。推論特化の QwQ 派生版も同時公開
2025-10-29 AIりんな、全 SNS を無期限休止。X・LINE・YouTube・TikTok 等 29 プラットフォームすべて停止。法人 LLM 事業に事実上の軸足移行

主要メンバー

氏名 役職
宋 珠憲(ソン・ジュホン) 代表取締役社長(2024 年 4 月就任)
ジャン"クリフ"チェン(陳 湛) 前代表取締役社長・創業者(Microsoft AI&Research 時代からチームを牽引)
ハリー・シャム(Harry Shum) 会長(Microsoft 元 AI&Research 部門エグゼクティブ VP)
坪井 一菜 チーフりんなオフィサー(AIキャラクター事業のクリエイティブ統括)

ピッチ・資金調達履歴

  • 2020 年 8 月: rinna 株式会社の業務開始を正式発表。Microsoft からの事業移管という形での独立であり、外部調達は確認されていない。
  • 2021 年 7 月: 親会社 Bombax Corporation がシリーズ A ラウンドを完了。評価額 10 億ドル超(ユニコーン規模)と公表したが、調達総額・リード投資家・rinna への資金移転額はいずれも非公開。
  • ICC・IVS・B Dash 等カンファレンスへの登壇実績は公開情報から確認できていない。

関連プロダクト

プロダクト 概要
AIりんな 2015 年に Microsoft が生み出した日本初の共感型 AI チャットボット。LINE で 860 万人超と友人関係。2025 年 10 月に SNS 活動を無期限休止
Koemotion 日本語 TTS API。7 感情・声色マップ・リップシンクデータを同時出力。月 100 リクエスト無料、以降 1 円/リクエスト〜
Tamashiru Custom 特定業種向けにカスタマイズされた日本語 LLM の受託開発・運用サービス。航空・教育・放送局などで実績
Virtual Human Talk AIアバター+LLM+音声合成を組み合わせた対話 UI ソリューション。Koemotion または他社 TTS と接続可能
Rinna Character Platform(RCP) 法人向けに AI キャラクター(個性・記憶・声)をまるごと提供するプラットフォーム。電通・寶結等と協業
Llama 3 Youko 8B / 70B Meta Llama 3 を日本語データ 220 億トークンで継続事前学習した OSS LLM(2024 年 7 月公開)
Qwen2.5 Bakeneko 32B Qwen2.5-32B を 180 億トークンの日本語データで継続事前学習した OSS LLM(2025 年 2 月公開、MIT/Apache 2.0)
キャラる 個人向け AI キャラクター育成 SNS アプリ(2022 年リリース、2024 年 3 月 5 日サービス終了

uPiper との位置関係

判定: 部分的競合 × 技術補完の可能性あり

rinna と uPiper は対象セグメントが異なるレイヤーで重なる。uPiper は StyleTTS2/Kokoro 系の軽量日本語 TTS エンジンを Unity SDK としてモバイルオンデバイスで動かす lifestyle business であり、クラウド依存ゼロ・ゲーム/アプリ組み込みを強みとする。rinna の Koemotion は高品質な感情表現と顔モーション同期を売りとするクラウド TTS API であり、常時ネット接続が前提の法人ユースを主戦場とする。したがって 推論実行環境(オンデバイス vs クラウド)主顧客(独立デベロッパー vs 大企業) の両軸で棲み分けが成立している。

差別化フックとして最も有効なのは latency と privacy である。uPiper のオンデバイス推論はネットワーク遅延ゼロ・音声データの外部送信なしを保証でき、これは rinna Koemotion が構造的に提供できない価値である。一方で rinna は Tamashiru Custom × Virtual Human Talk のような高精度なキャラクター人格統合を得意とし、エンタープライズの与信を背景に大規模導入を獲得できる。ゲーム・ライフスタイルアプリ領域では uPiper が cost と privacy で先行しており、放送・接客・カスタマーサポートなど感情表現の細やかさと信頼性が求められる法人用途では rinna に優位がある。